全館空調システム+床下エアコンを快適に運用する為には、高い断熱性能の家であることが必須なのですが、この「断熱性能」とは具体的にどういう基準で高い・低いが決まるのでしょうか?
このページでは「断熱性能」にまつわる国の基準値や制度、また「高い断熱性能の家」を建てることで申請可能なお得な制度も併せてご紹介します。
断熱性能とは
断熱性能とは、住宅が外部からの冷たい空気や熱い空気をどれだけ遮断できるかを示す性能のことを指します。
高い断熱性能を持つ家は、外の気温に左右されず一年中快適な室温を保つことできるので、全館空調システム+床下エアコンの家づくりに必要不可欠な要素となります。
住宅の断熱性能について理解を深めるために、まずはよく出てくる用語とその意味について解説します。
関連用語:UA値
UA値とは、室内の熱(または冷気)の「外部への逃げやすさ」を示す数値。この数値が小さいほど断熱性と省エネ性能が高い家、ということになります。
UA値は、家の中から逃げる総熱量を、外皮と呼ばれる住宅の内部と外部を隔てる境界部分(屋根、壁、窓、ドア、基礎など)の総面積で割って算出します。
UA値は、この後説明する様々な住宅省エネ性能の基準として使用されています。
国土交通省では、地域の気候特性に応じて日本全国市区町村を1から8までの地域に分け、各地域区分ごとにUA値を規定しています。地域区分の数値が小さいエリアほど寒冷地なので、快適な住環境にするためには低いUA値(=高い断熱性能)が必要になります。
地域区分 | 1〜2 | 3 | 4 | 5〜6 | 7 | 8 |
UA値 | 0.46 | 0.56 | 0.75 | 0.87 | 0.87 | 無し |
とはいえ、いくらUA値が低く(=家の断熱性能が高く)ても、家が隙間だらけでは断熱性能はうまく機能しません。
家の断熱性能を判断するには、UA値だけではなく、家の気密性能(家の中にどれくらい隙間があるかを示す値)を表す「C値」という数値も重要です。
UA値とC値の2つを高いレベルで組み合わせることで、断熱性・省エネ性に優れた家が完成します。
関連用語:断熱性能評価基準「断熱等性能等級」
断熱等性能等級は国土交通省が設定した基準で、住宅の断熱性能を評価するための指標です。
最低ランクの等級2から最高ランクの等級7まであり、前述のUA値と、ηAC値(UA値と同じ住宅の外皮性能を構成する指標)という2つの数値で等級が決定されます。
2021年国土交通省資料によると、現在日本にある住宅の約90%が断熱等級3または等級2。
2025年以降に建築する注文住宅は「断熱等性能等級4」が国の最低基準となり、今後基準を満たしていない住宅は建築できなくなります。
関連用語:ZEH(ネット・ゼロ・エネルギー・ハウス)
ZEH(ゼッチ)は、「Net Zero Energy House(ネット・ゼロ・エネルギーハウス)」の略で、住宅の建築基準の一つです。
この基準に適合する住宅は、高性能な断熱材や窓を使用した省エネルギーな住宅を設計し、太陽光発電などの再生可能エネルギーを駆使して、年間のエネルギー消費とエネルギー生成をほぼゼロに近づけた、省エネルギーに特化した家になります。
ZEH基準において、前述の「断熱等性能等級5」に該当するUA値(熱貫流率)の高い性能が求められます。これにより、高い断熱性能を持つ建物がエネルギーを効率的に利用し、環境に優しい住宅ということがわかるのです。
経済産業省の積極的な政策により、ZEHの普及が進み、2020年には新築住宅の約56%がこの基準を満たす住宅となりました。この取り組みは、省エネルギーと環境への配慮が高まる中で、持続可能な住宅の実現に向けた重要な一歩です。
関連用語:HEAT20とG1・G2・G3
「住宅外皮の性能を示すグレード(G1・G2・G3)」は、一般社団法人「20年先を見据えた日本の高断熱住宅研究会」(HEAT20)が提案する、高い断熱性能を持つ住宅の水準を示す基準です。
諸外国では、環境への負荷を減らし、エネルギーの効率的な利用を促進するため、住宅性能の基準が厳格化しています。
一方で、日本の住宅性能の基準は長らく変わっておらず、他国に比べて省エネルギーや快適性の面で遅れていました。その課題に対処し、日本の住宅建設において、より省エネルギーで快適な住環境を実現するためにHEAT20の基準が制定されたのです。
そのため国の基準より厳しくなっており、住宅の外皮性能を評価する際、UA値(外皮平均熱貫流率)を満たすことだけでなく、地域ごとに設定された住宅シナリオにおける室温(NEB)と省エネルギー(EB)の両立も重視。冬場に暖房を入れたくなる際の室内体感温度、最低限確保されるべき室温を示しされています。
G1では10℃以上、G2では13℃以上、G3では15℃以上の室温を維持することが求められおり、住宅の外皮性能だけでなく室内の快適性にも焦点が当てられています。
2023年現在「高断熱住宅」と言えるのは、G2以上のグレードとなります。
当社が建てる家の断熱性能
スローライフ住宅設計の建築エリアはその多くが気候特性の地域区分6〜7にあたる福岡県ですが、北海道など地域区分1の寒冷地基準に匹敵する高度な断熱性能の家を提供しています。
具体的には、UA値(外皮平均熱貫流率)が0.25から0.34W/㎡Kの範囲に位置し、断熱等性能等級はおおよそ6.5。福岡地域において非常に優れた断熱性能の家と言えるでしょう。
また、HEAT20の基準においてはG2以上に該当。全ての住宅がZEH基準以上の断熱性能を達成しており、エネルギー効率の向上と快適な生活環境の提供をお約束しています。
断熱性能向上のメリット
住宅の断熱性能を向上させるメリットは年中快適な室温の家で過ごせるだけではありません。
光熱費の節約が期待できるほか、結露対策・ヒートショック対策にも効果的。さらに、各種補助金や減税の申請対象になることもあり、高断熱の家をお得に建てることも可能です。
メリット:1年中快適に過ごせる
断熱性能を向上させると、室内の温度を年中適温な状態で維持できます。 室内外の熱移動を防ぐことで、猛暑の夏も、空気が冷たい冬も、外気温を気にせず快適に過ごすことができるようになります。
低断熱性能の住宅では、床・壁・窓から外の冷気や熱が伝わりやすく、室内の体感温度が実際の室温よりも低く(もしくは高く)なることがあります。
しかし、高断熱住宅では室温と体感温度が近いため、少ない冷暖房設備でも一年中快適に過ごすことが可能です。
メリット:光熱費を節約できる
前述通り、断熱性能の向上によって室内が外気温の影響を受けにくくなります。その結果、冷暖房の使用を最小限に抑えても快適に過ごせるようになり、冷暖房設備の運転時間が短縮され、光熱費を大幅に節約できます。
さらに、冷暖房を使用した際も、その涼しさや暖かさが持続しやすく、快適な室温を保つためのエネルギー消費が少なくなるため、経済的で環境にも優しい住環境が実現します。
メリット:結露対策に有効
結露とは、暖かく湿度の高い空気が急激に冷却され、その空気中の水蒸気が水滴として凝結する現象です。
この結露が原因で、カビやダニの繁殖が促進され、それら微小な粒子が室内に漂い、アレルギー症状を引き起こす可能性があります。そのため、結露対策は快適な住環境を維持する上で非常に重要です。
高い断熱性能を持つ住宅は、壁面が冷えにくく室内の温度差が少ないため、結露が生じにくくなり、カビやダニの繁殖を防ぎます。 断熱性能の向上は、清潔な居住環境を維持と、アレルギー発症などの健康リスクを低減することができるのです。
メリット:ヒートショック対策
ヒートショックとは、急激な温度差が原因で血圧が大きく変動し、身体にダメージを与える現象のことを指します。
ヒートショックは、はめまい・失神・心筋梗塞・脳梗塞など、命に関わる重大な病気を引き起こすリスクになります。
高断熱住宅は、家全体を一定の温度に保つことが可能です。そのため、「冬場の冷え込んだトイレ・洗面室・浴室」など、居間と極端な温度差がありヒートショックを起こしやすいとされる場所でも、室内温度差を最小限に抑えられます。
断熱性能を向上は、家族全員の健康的な生活に繋がるのです。
メリット:各種補助金や減税の申請対象になる
現在日本では、住宅の省エネルギー化を支援するために、さまざまな補助金や減税制度が提供されています。
例えば「こどもエコすまい支援事業」という、高度な省エネルギー性を持つ住宅を、子育て中の夫婦が新築または購入する際に、補助金が支給される制度。他にも「長期優良住宅」や「ZEH(ゼッチ)」など、「省エネルギー住宅の建築」が申請条件の補助金・減税制度がいくつかあります。
補助金や減税制度の種類・申請条件・申請期間・申請可能枠・補助金額(減税額)は、年度ごとに変わります。また組み合わせが可能(または不可能)な制度があるなど少々複雑なので、制度を利用して省エネルギー住宅の建築をご希望の方は、お早めにお問い合わせください。
断熱性能が高い高性能住宅を建てるなら今がチャンス!
断熱性能は、建物が外部の気温や気候から室内の快適な温度を維持するために非常に重要です。
一年中快適、健康的に過ごせる高性能な家づくりのために、 UA値・断熱等性能等級・ZEH・HEAT20などの指標を知っておくと理解度が深まり、建築後の満足度も高くなるでしょう。
高い断熱性能を持つ住宅には快適な居住環境だけでなく、光熱費の節約、結露対策、ヒートショック対策、補助金や減税の申請対象となることなど、さまざまなメリットがあります。
現在、持続可能な住環境の実現に向けた、省エネルギー化と快適性を両立させるための取り組みを国が進行中です。 家づくりを検討中の方にとっては、お得に高性能住宅を建てるチャンスといえるでしょう。